大喜利ドラフト会議2020
お題
伝説の囚人が書いた本「独房生活1028日」に記されている

1028日目の出来事
6

『独房生活1028日 夜、曇り』

 昼、食堂で最後の昼食を楽しんでいるとき、突然複数の刑務官がやってきた。その中でひときわ物々しい態度をとった男が、右手に持っていた拡声器を使って話し始めた。
「今から、君たちには殺し合いをしてもらいます。諸君らは国家機密による罪人撲滅プログラムの対象者に選ばれた」
突然の発表に辺りは騒然となった。受刑者たちの間で実しやかに噂されていた刑務所内で実施される罪人同士による殺人ゲーム、通称『プログラム』が僕たちのいるN刑務所で行われることとなったのだ。
「ふざけるな!いきなりどういうっ」
隣の席に座っていた男が立ち上がって叫んだとき、パヒュと気の抜けた音がした。次の瞬間、男は膝をガクッと曲げて床に崩れ落ちた。
「うわ、向井!向井!……し、死んでる」
僕とは反対側にいる、向井と呼ばれた男の隣に座っていた男が悲鳴を上げた。拡声器の男とは別の、ひょろ長い背格好をした刑務官がニューナンブM60で向井の額を撃ち抜いたのだった。(馬鹿な奴だ、どんな時でも模範囚である僕みたいな態度を取らないと)
「これから説明をしていきたいのに、一々邪魔が入るのは困るのでな。諸君、今ので分かってもらえたと思うが、進行の邪魔をするようであれば、この場で死んでいただくことになる」
拡声器の男のこの言葉に、今までざわついていた食堂が一瞬で静まり返った。
 刑務官の説明は2時間近く行われた。会場は刑務所内のみ、プログラム優勝者はその場で赦免されること、武器は説明の後、袋に入ったものをランダムに支給されること(割り箸からポンプ式ショットガンまであるようだ)、1日誰も死ななかった場合全員失格となり刑務所は爆破されるということ、自殺者が出た場合も同様であるということなど、プログラムの内容とルールを長々と話された。
 説明の間、こっそり周りの様子を伺うと、多くの囚人たちの顔から生気が失われてしまっているのが見てとれた。みんな絶望している。今日まで仲良くやってきた仲間たちと殺し合うことなど、出来る筈もないとでも思っているのだろう。馬鹿馬鹿しい。犯罪者如きが仲良しゴッコをするだなんて笑える。
 この狂ったゲームに参加すること自体別に構わない。ただ、僕には一つだけ疑問に思うことがあった。今日の17:00時になった時点で僕は自由の身のはず。それまで凌げばプログラム中であれ釈放されるのでないか。
「以上、質問のある者は」
説明が終わり、質疑応答の時間となった。僅かな期待を胸に、なるべく慇懃な態度をとって刑務官に尋ねた。
「すいません、僕は今日で釈放されるはずなのですが、その場合はどうなるのでしょうか」
僕のこの質問はどうやら想定済みだったようだ。間髪を入れずに答えが返ってきた。
「プログラムが行われている間は、刑期は延長される。仮にプログラムが今日中に終了した場合、お前の刑期はたしかに今日までとなるがな」
質問に答えた刑務官は残念だったな、とでも言いたげな顔をし、ニヤリと笑った。
 それから、半日。割り箸を持ってた奴をしとめ、僕は今この日記を書いている。本当なら今頃友人のタワービル・マンションで、独房での失敗談の一つでも話しながら、有望な会社の株でもチェックしていたことだろうが、どうやら僕は不幸の星の下に生まれてきてしまったらしい。
 オーケイ。僕はこの日記をまだまだ書き続けなくちゃいけないみたいだ。僕は周りの馬鹿な連中とは違い、僕は社会に必要とされる男だ。絶対に生き残ってやる。そして釈放されたその時、この日記を世に公開しよう。腐りきった社会の真実を白日の下に晒し、ついでにどこかの出版社に<血痕が付着して読めない>て売って一儲<血痕が付着して読めない>。




<死亡>
囚人番号046 堀江@独房
【残り58名】
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