この旅でどうしても何かしなきゃ、とかそういうことは特にないんだけど、こういうの変かな?と聞かれ私は一瞬困ってしまった。何かする時には必ず目的がありそれに最適な行動を取ることしかしてこなかったから。何も目的を持たずに旅に出ようとしている目の前の男が急に気持ちの悪い、他の生物のように見えてきたけど、元から同じ生物だと思っていた私の方がおかしかったのだ。金子みすず。つらつらとそんな事を考えていても、ここはモロッコのフェズ近郊。砂と岩の街だ。夜は冷えるし、今は16時。急いだ方がいい。目の前の男はぼんやりと地平線を見ている。ここに置き去りにしたら、いつまでここにい続けるのか少し試したくなった。だが私の右足は彼の左足とくっついているのでそうもいかないのだった。つい先程、8の字をしている金具をはめられて私たち2人の足首は固定されてしまった。何かを持ったイタチのような動物が足元に来たと思ったら、隣にいた男と私の足首が金属の輪で結ばれていた。ディズニーランドで見るような、わざとくすませた金属なので最初は何かのアトラクションかとも思ったが違ったようだ。そうされるような事をした覚えもなかった。可変コブラクダが1コブになったり2コブになったりを繰り返す光景に見とれていたのが悪かったのだろうか。このラクダやイタチ?といい、ここ数年で妙な動物が急に増えたものだ。まぁそのお陰で食料供給は安定し移動も速くなったり、世界は色々楽になったのだが。私が足繋がれインシデントに戸惑っている間、周りの観光客は写真を撮り面白がっていたが、地元民らしき老人達は特に驚いていなかったのでこの辺りではよくあることなのかもしれない。二人三脚で近くの店まで行き、どうすれば取れるか聞いてみたが英語が通じなかった。身振り手振りを見るにどうやら大きな街に行かないと取れないようだった。こうして私が状況を把握し情報を集めている間、横の男はああ、うん、程度しか話さず全く頼りにならなかったが、近くにいて耐えられない訳ではない種の人間だったのはラッキーだったので、相殺しておいてやることにした。まずはフェズに向かう。道すがら少しは仲良くなってみるかと思い、旅の目的を聞いたら冒頭の返答であった。うーんまあ、いいんじゃないですか?と曖昧な返答を返し、二人三脚で道を急ぐ。イチ、ニィ、のかけ声はかけなくても歩けるようになっていた。急にあれ、砂クジラかな、と横で呟かれた。視線を辿った砂丘の奥で、砂が舞っている。オレンジがかった白いヒレがちらと見えた。そうかも、と言う暇もなくぎゅいっと足を引かれる。なに?男が砂クジラの方に駆け寄ろうとしてて。え、待って、と言っても、止まってくれな、足が、引っ張られる え 砂丘、登るの? (ルル) え あなたいま歌った?あ、砂クジラの、声に、似て、ちょ、速、クジラ、と喋れる、人がいるっ、て聞い、たこと ある、(ゥルル)ちょと、待って まっ、あ 砂丘のてっぺん 着、く、や、引っ張、らないで、まって痛、いっ、たい! |