「今度のマリオは皮膚科へ行く。マリオは皮膚科はあまり好きではない。ソファやドアノブや、全部が酷い皮膚の病気の菌がついていたらどうしようと思えてしまうからだ。 でも今度のマリオは新しいマリオなので、内科や、胃腸科や、循環器科には行かない。新しいマリオだから、もう行く必要がない。あんな、マリオの苦しみ、痛みをわからない藪医者どもへの所へなんか!そう今度のマリオは新しい。昨日までのマリオじゃない新しいマリオになった。だから皮膚科へ行く。皮膚科ならマリオの苦しみを救ってくれるはずだ。 ああまたいる、青いキリンと白いターバンのインドの少年だ。家でも外でもいつも角からこちらを見てくる。それはマリオの肌が汚らしいからだ。頭皮からフケが落ちているからだ。今日は家を出る前きっちり100回コロコロと掃除機をかけたのに! 身体が思うようにいかないことは弱さだ。弱さは死に繋がる。マリオは死にたくない。母は毎晩マリオの髪を梳かしながら、美しい子、あなたは神の子と囁いてくれた。銀の鈴のような声…その母を奪った悪い男ども!母は男どもを神父と勘違いしてついて行った。勘違いしたんだ、でなければ清廉潔白な母があんな真っ赤なドレスを着て、あんなに自分を罵りながら出ていくはずがない。この皮膚とフケを治して、また美しくなれば母は戻ってきてくれるはずだ。あああちらの角からまたキリンが覗いている、迂回していかないとーーあいつらのせいでいつも予約に遅れっちまう! マリオは皮膚科に行く。皮膚科は大きなビルにある。偉いビルだ。いろんな偉い人がいて、マリオに優しくしてくれる。マリオは毎日、このビルでいろんな医者にかからせてもらえる。こっちが治ったと思ったらまたあっち、あっちが治ったと思ったらそっちと毎日大変だが、マリオは幸せだ。マリオは美しい子になる。なぜって偉い先生がいるから。 たまにいる精神病の女がマリオの唯一の悩みだ。あいつらは自分のことを看護婦だと思っていて、マリオが気づくより早く身体をひっぱったり、腕をチクッとしたりする。可哀想な病人め。マリオは健康で至って普通の人間なので、寛大な哀れみの心で接してやる。第一白い服で沢山居やがるので、どれが誰かわかったもんじゃない。劣った人間ども。マリオは自分が健康で美しく強い子供で良かったと思う。ああまたキリンと子供だ。この皮膚と頭さえ治ればマリオは完璧になって、母に会える。マリオは早く皮膚科に行く。今度のマリオは皮膚科に行く。」 |