先生「それじゃあユウキくんとミルカちゃん、次の問題は解けるかな」
---- 問: 実数全体を定義域とする連続な関数fがある。任意の2つの有理数x,yについて f(x+y) = f(x)+f(y) が成り立つとき、次の問いに答えよ。
zを任意の実数として、 (i) 任意の整数aについて、f(az) = f(z)・a になることを証明せよ (ii) 0でない任意の整数aについて、f(z/a) = f(z)/a になることを証明せよ (iii) 任意の有理数pについて、f(pz) = f(z)・pになることを証明せよ (iv) f(z) = f(1)・zになることを証明せよ ----
ユウキ「ゲロ吐きそう。でもここで着いていこうとするのを諦めたら、しばらく完全な無能として話を聞くことになってしまう。ミルカちゃんもこういうのが苦手だったらしばらく過ごしやすいけど」
ミルカ「えーと、fがどんな関数かは具体的にはわからないけど、f(x+y) = f(x)+f(y)が成り立つってことね。てことは例えば f(2) = f(1+1)だから、f(2) = f(1)+f(1)になって、 f(3) = f(1+2) = f(1)+f(2) = f(1)+f(1+1) = f(1)+f(1)+f(1) になるってことか。じゃあ(i)はできたかも!」
ユウキ「最悪だ、こっちが第一歩を踏み出そうとすらしていないうちに、着々と進んで何かを掴み始めている」
ミルカ「az = z + z + z+... +z(※zがa個)と表せることを考えると、(i)は、 f(az) = f(z + z + z+... +z) (※()の中のzがa個) = f(z) + f(z + z+... +z) (※f(z)が1個、()の中のzがa-1個) = f(z) + f(z) + f(z+... +z) (※f(z)が2個、()の中のzがa-2個) ... = f(z) + f(z) + f(z)+... +f(z) (※f(z)がa個) ってできるから 、
f(az) = f(z) + f(z) + f(z)+... +f(z) (※f(z)がa個) = f(z)・a
が示せたよ!先生、どう?」
先生「なるほど、たしかにaが正の整数のときはそれで良さそうだね。でもミルカちゃん、(i)ではaが負の整数のときのことも示さないといけないよね、マイナスのときはどうするの?」
ミルカ「えーっと、同じように、は無理だから… どうするんだろう…」
ユウキ「やった、ミルカちゃんもかなり序盤で詰まった、この感じじゃ(iv)に行く前にギブアップするんじゃないか?」
先生「じゃあユウキくんとミルカちゃん、この関数、f(0) = 0が成り立つんだよね、まずそれを証明できるかな?」
ユウキ「なんか簡単なところから始めようとしてるんだろうけど、まずどうやって考えたら証明を自分で思いつくのか、思考のとっかかりが人生で一度も見えたことがない」
ミルカ「f(0) = 0を示すのか、えーと、とりあえずf(x+y) = f(x)+f(y)に0を代入してみると、 f(0+0) = f(0)+f(0) f(0) = f(0)+f(0) あ、てことは両辺からf(0)を引いて、 0 = f(0) だ!できました!」
先生「そうだね、これでaが0の場合にもf(az) = 0 = f(z)・0 = f(z)・a が示せたことになる。 じゃあ(i)に戻って、aが負の数のとき、わかりやすく書くと、nが自然数だとしてa = -nのとき、f(az) = f(z)・aはどうやって示せるかな? f(0) = 0 を使うことになるよ。」
ユウキ「難しい問題が簡単な問題に分割されて少しずつ解決してるだろうってことはわかるけど、それぞれの問題の内容や難易度が全然わからないから、体感としてはむしろ問題の数が増えてしんどくなってる感じがするぞ」
ミルカ「えっと、f(az)とf(0)とnが式に入るってことは、a+n = -n+n = 0とか、az+nz = -nz+nz = 0を使うのかな? f(az+nz) = f(az)+f(nz) f(-nz+nz) = f(-nz)+f(nz) f(0) = f(-nz)+f(nz) 0 = f(-nz)+f(nz) だんだんそれっぽくなってきたかも!
0 = f(-nz)+f(nz) から移項して -f(-nz) = f(nz) nは自然数、つまり正の整数だから、右辺は最初に示した通りf(z)・nにできて、 -f(-nz) = f(z)・n マイナスを払って f(-nz) = f(z)・(-n) -n = aだから代入して f(az) = f(z)・a だ! これでaが負の数でも示せたから、(i)が解けた!先生、あってる?」
ユウキ「内容は全然追えなかったけど、この自信満々な声の感じだと、たぶんすっきり解けたんだろうな」
先生「ミルカちゃん、正解。整数を正、0、負の3パターンに分けて、すべてのパターンで証明できたね。次は(ii)を解いてみようか。aが整数のとき、f(z/a) = f(z)/a となることを証明できるかな?」
ミルカ「f(z/a) = f(z)/a を示せればいいんだよね。f(x+y) = f(x)+f(y)は足し算で、これは割り算だから、そのままだと手の付け方がわかんないな…」
ユウキ「よし、詰まった!このまま何度も詰まれば、いずれ諦める瞬間が来るんじゃないか?」
ミルカ「…でもきっと(i)の負の数の時に移項したら証明できたみたいに、最終的には両辺をaで割って証明することになるんだろうから…」
ユウキ「最悪だ、さっきの問題で一般的に通用するテクニックみたいなのを学習してるぞ。元々あった数学の能力の差が、この問題を解くという経験によってさらに開こうとしている」
ミルカ「f(z/a) = f(z)/aを示したいってことは、この両辺にaをかけた f(z/a) ・a = f(z) を示せればいいのか。 あ!これはできそう! (i)より、f(z/a) ・a = f (az/a) だと言えて、az/a = zだから、 f(z/a) ・a = f (az/a) = f(z) 両辺をaで割って f(z/a) = f(z)/a だ!先生!どう?」
先生「細かい議論は少し雑だけど、ほとんど正解と言っていいかな。」
ユウキ「なんか萎えたかも。自分より数学できる女の人を目の前にすると引け目感じちゃうし、あんまかわいいとかも思えなくなるなあ。自分より足が速い女の子のこと好きになれないみたいな感じで、自分より数学ができる子もかなり嫌だ」
ミルカ「やった!この調子で(iii)も解いちゃおう!」
ユウキ「得意げに盛り上がってるけど、自分より明確に能力があることって誇示されたら、普通に嫌な気持ちするけどね。もし古くから女性がする仕事とされている料理とか、裁縫とか、そういう部分で上回られていても、「自分はそもそも女性の仕事をしようと思ったことないから今その能力で負けてたとしても最初から勝負しようとしてないだけ」って思えるけど、数学みたいに誰もが一度は挑戦したことがあって才能の差が明確に結果として見える上に、どちらかと言えば男の得意分野とされている部分で上回っていると見せつけられると、自慢してマウント取って男をバカにしたいだけにしか感じられないから、もう結構ミルカちゃんのこと苦手かも。ミルカちゃんが何かに成功しているのを見たくなくなった」
先生「(iii)は有理数の場合どうなるかだね。ユウキくん、有理数ってどんな数のことかわかるかな?」
ユウキ「有理数は、整数÷整数の形で表すことができる数ですよね。」
先生「ユウキくん、正解!」
ユウキ「そういう部分はなんの問題もない。授業も受けてるし、有理数の定義みたいな教科書通りのことを聞いてくれたら答えられる。でも有理数の定義を用いて何かを示さないといけなくなったり、他の数と有理数の違いが重要になってくる場面に出くわしたりしても、じゃあこれを使って何をどうしたらいいかっていうのが、全然わからない。道具の形と名前はわかるけど、使い方が全くわからない状態」
先生「じゃあ、(iii)を解いてみよう」
ミルカ「(iii)は簡単、(i)と(ii)を組み合わせるだけだからほぼただの作業だね。」
ユウキ「解く前から作業とか言ってるよ、そういう態度とか言葉遣いの節々に、こちらを貶す意図が見えてきちゃうんだよな。ミルカちゃんは(iii)を見下してるつもりなんだろうけど、(iii)を見下すということは同時に(iii)より下にいる人も見下しているということに自覚的になったほうがいい。そこに自覚的にならずに「自分は数学得意ですし良い子です」みたいなアピールをしている偽善者の顔面に、男の全力で拳を叩き込んだらさぞかしスッキリするんだろうな」
ミルカ「pは有理数だから2つの整数a,bを用いてa/bと表すことができる。これをf(pz) = f(z)・pに代入すると、 f(az/b) = f(z)・a/bになる。つまりこれを示せばいいんだよね。f(az/b)について、(i)より f(az/b) = f(z/b)・a とできて、f(z/b)に(ii)を使って、 f(z/b)・a = f(z)・a/b ってなって、f(az/b) = f(z)・a/bが示せた。 ここでp =a/bだから f(pz) = f(z)・pってこと! どう?正解?」
ユウキ「どうせあってるよ今回も、僕と違って数学得意なんだから。正解だってわかってるのに正解?って聞くなよそんなに人に正解って言ってほしい?」
先生「うん、細かな議論は足りてないけど、ほぼほぼ正解だよ。」
ユウキ「あーこいつもこいつで素直に正解って言わずにさっきから議論が少し雑とかほぼほぼ正解とかずっとちょっとケチつけててウザい。こいつも数学出来る女が嫌いだから調子乗らせたくないのか?だとしても全然仲間意識持てないな、結局男女どうこうと関係なく数学できるかできないかの分断が僕にとって重要で、もし数学できる人が自分と同じ考えを持っていてもそこに至った経緯が全く違うだろうから仲間とは思えないね」
ミルカ「この調子で最後の問題も解いちゃおう!」
ユウキ「ここでミルカちゃんが(iv)を解けたら、もう一緒にはやっていけない、縁を切るしかない。でももし解けなかったとしても僕より数学得意ってわかっちゃってるから、今までみたいに素直な気持ちで遊んだり話したりはできないだろうな」
ミルカ「(iv)はf(z) = f(1)・zを示せばいい、ついに実数の話になるわけね。もしこのzが有理数pの場合は、(iii)の式f(pz) = f(z)・pにおいてzが1になった形だと思えば、f(p) = f(1)・pが成り立つのは明らかと。考えなきゃいけないのはzが無理数のときってことだよね。」
ユウキ「状況を整理しているだけのつもりでやってるんだろうけど、整理している内容を口に出している気持ちの中に、自分の思考が整頓されていることを見せびらかしたいという気持ちが全くないと、天に誓って言えるか?」
ミルカ「うーん、じゃあzを10進数で表示して、小数点以下を桁ごとに分けて考えるのはどう? 例えばzが有理数で、z=25.82とかだった場合は f(25.82) = f(25) + f(0.8) + f(0.02) = f(1)・25 + f(1)・0.8 + f(1)・0.02 = f(1)・25.82 ってできるわけだけど、それと同じことを無理数でもやればいいんじゃない?
たとえば z = πのとき、π=3.141592...だから、 A0=3, A1=0.1, A2=0.04, A3=0.001... みたいにπの小数点以下を桁ごとに分けた数列Anを考えると、 f(π) = f(A0+A1+A2+A3+A4+...) =f(A0) + f(A1) + f(A2) + f(A3) +... ってできて、Anはそれぞれが有理数だから、 = f(1)・A0 + f(1)・A1 + f(1)・A2 + f(1)・A3 +... ってできて、f(1)でくくって = f(1)・(A0 + A1 + A2 + A3 + A4 +...) で、π = A0 + A1 + A2 + A3 + A4 +... だから = f(1)・π になる!
こんな感じでどんな無理数でも桁ごとに分けて考えたら、zが無理数の場合でも、 f(z) = f(1)・z が証明できる!先生!どう?」
ユウキ「ずっと何言ってるか分からなかったけど、結局ミルカちゃんは(iv)も解いちゃったみたいだ。さっきまでと解き終わった後の表情が全く同じだもん。どうせ正解。これで終わり。さよなら」
先生「うーん、大間違い。」
ユウキ・ミルカ「「え!?」」
先生「さっきからミルカちゃんはチェックするべきいろいろな条件を説明なしに飛ばし続けていて、「わかってて省略してるのかな、それともわかってないのかな」と思っていたけど、今ので完全にぼろが出たね。ミルカちゃんはわかってなかった。」
ミルカ「そんな…どこが間違ってるんですか…?」
ユウキ「すごい、なんだろうこの感じ、数学できるから嫌だった人が数学のことで鼻っ柱折られてるのに、それはそれで悲しい気持ちになる自分がいる。僕の中で今何が起こってるんだ?」
先生「いいかい、 f(x+y) = f(x)+f(y)が成り立つとき、 f(A1+A2+A3+A4+...) =f(A1) + f(A2) + f(A3) +... って操作は本当にできるのかな?できないよね。だって右辺の...で省略されているものの中に必ずf(m + m+1 + m+2 +... )っていう無限項を含むようなfの項が残っているはずだから。
ミルカちゃんはたぶん f(A1+A2+A3+A4+...An) =f(A1) + f(A2) + f(A3) +...f(An) が成り立つからって、 f(A1+A2+A3+A4+...) =f(A1) + f(A2) + f(A3) +... もできると勘違いしてるよね?」
ユウキ「ヤバい、なんかそれっぽいことを言われてる!」
ミルカ「え! f(A1+A2+A3+A4+...An) =f(A1) + f(A2) + f(A3) +...f(An) は成り立つのに、 f(A1+A2+A3+A4+...) =f(A1) + f(A2) + f(A3) +... は成り立たないんですか?!どうして?有限回でも無限回でも、結局同じ操作をし続けるだけじゃないですか! 有限回なら何度繰り返しても成り立つ性質は、無限回でも成り立つ(☆)んじゃないですか?」
ユウキ「こっちも正しそうなことを言ってるんだろうけど、口調が焦ってるぶん間違ってそうな感じが強い!」
先生「うーん、ミルカちゃんのその主張は間違ってる。間違っちゃうこと自体は別にいいんだけど、自分が何をしていたかはちゃんと自覚して、自分の行動に責任を持った方がいいよ、ミルカちゃん。」
ミルカ「どういうことですか?」
先生「きみは無理数zを lim(n→∞)Σ(k=0, n)Ak 、要するにA0 + A1 + A2 +...っていう有理数の無限和の形で表そうとしたよね。」
ミルカ「はい」
先生「2つの有理数の和って有理数になるよね。数列Anは全て有理数だから、A0+A1は有理数だし、ということはA0+A1+A2も有理数。この調子で有理数を足すこの操作をあと何度有限回繰り返しても結果は有理数だよね。一方、この操作を無限回繰り返したA0+A1+A2+A3+...について考えると、これはz、つまり無理数になる。 じゃあこれって、「有理数+有理数=有理数」という有限回の操作なら何度繰り返しても成り立つ性質が無限回の操作でも成り立つ(☆)わけではない、そういう例の一つだよね?しかもA0+A1+A2+A3+... = z っていうのはミルカちゃんが自分で言い出したことで、つまりミルカちゃんは、☆が正しくないって自分でわかってて、最初はそれを利用してたわけだよね?それでいてその口で、☆だなんて抜かしたんだよね、自分の解法を守るために」
ミルカ「…」
ユウキ「これブーメランだ。具体的なことはわからないけど、ミルカちゃんが自分で言ったことがそのまま自分に刺さってるみたいだ。数学でブーメランとかあるんだ、ミルカちゃんさっきまでのドヤ顔からの落差で今相当恥ずかしいんじゃないか?」
先生「無限回の操作と有限回の操作は違うんだよ。無限を扱うときに勝手に直感で独自の操作はしない方がいい。それで結果的に嘘ついてるし、ミルカちゃんは誘導に乗って手当り次第試行錯誤すれば問題を解けることが多いからって、自分にはセンスがあると勘違いして調子に乗りすぎ。ミルカちゃんは本当は数学が得意とかじゃなくて、ちょっと要領がよくて出題者の意図を汲むのが上手なだけだよ。自分がやっている操作の意味も分かってない。」
ユウキ「そんな厳しいこと言わないでほしいと思っちゃうけど、なんでなんだろう。ミルカちゃんが数学出来ないのは僕にとって嬉しいことなはずなのに…」
ミルカ「…」
ユウキ「そうか、ミルカちゃんの鼻を折ったのはあくまでミルカちゃんより数学ができる先生だし、ミルカちゃんが僕より数学ができることは変わらなくて、数学ができる人ができない人にマウントを取る構造が解決しているわけじゃないからスッキリしないんだ。ミルカちゃんは僕より数学ができるんだから、他の人より数学ができない姿を見せられちゃうと、僕の数学のできなさが際立ってしまうのか… わかった、これNTRだ。年上で子ども扱いしてくる彼女が経験豊富なおじさん上司に寝取られるみたいな、別にミルカちゃんは彼女じゃなくてもうむしろ嫌な相手だから元カノみたいなもので、それでこのシチュエーションでおじさんに対応する先生が実際におじさんなのは偶然だけど、とにかくNTRと同じで、だから心がかき乱されるんだ」
先生「重要な部分はもう話したし分かってると思うから聞き流してくれていいけど、今日の問題と同じ形になるようにした反例を出すね」
---- 「任意の有理数x,yに対してg(x+y) = g(x) + g(y) が成り立つとき、有理数からなる数列Anに対しg(A0 + A1 + A2 + A3 +... ) = g(A0) + g(A1) + g(A2) + g(A3) +... が成り立つ」という主張への反例(「有限回なら何度繰り返しても成り立つ性質は、無限回でも成り立つ(☆)」わけではないという、卑怯者のミルカが一度利用したのにその後で都合よく無視していたこと):
無理数zについて、その整数部分をA0,小数第1位×0.1をA1、小数第2位×0.01をA2... というように構成した数列Anについて考えると、 z = lim(n→∞)Σ(k=0, n)Ak = A0 + A1 + A2 + A3 +... と表せる。
実数を定義域に持つような関数gで、g(x)の値が (1)xが有理数の時0 (2)xが無理数の時1 になるようなものを考えると、有理数x,yについてg(x + y) = g(x) + g(y) が成立する。(注:g(x + y) = g(x) + g(y) = 0)
このとき、nを任意の自然数として、有理数からなる数列Anについて、確かに g(A0 + A1 + A2 +...An) = g(A0) + g(A1) + g(A2) +... g(An) = 0 (※ g([Σ(k=0, n)Ak]) = Σ(k=0, n)g(Ak) ) は成立する。
しかし、さっきの無理数zについてg(z)を考えると、g(z) = g(A0 + A1 + A2 +... ) = 1である一方、g(A0) + g(A1) + g(A2) +... = 0+0+0+... = 0 となる。
つまり g(x + y) = g(x) + g(y)が成り立つからといって、g(A0 + A1 + A2 +... ) = g(A0) + g(A1) + g(A2) +... が成り立つわけではない (※ g(x + y) = g(x) + g(y)が成り立つからといってg([lim(n→∞)Σ(k=0, n)Ak]) = lim(n→∞)Σ(k=0, n)g(Ak)が成り立つわけではない) ----
先生「というふうに、ミルカちゃんが大声早口で言って雰囲気で成立させようとしていた証明は、普通に全然大嘘なんだ。そもそも☆が間違ってるし、ミルカちゃんもそれはわかってなきゃおかしいからね」
ユウキ「こんなの人格否定じゃない?ミルカちゃんもうボコボコだよ、ちょっと可哀想になってきた。やっぱり素人が下手に数学なんかやってもろくなことがないんだ」
ミルカ「…でも、今回の問題ではやってることは間違ってないと思うんです。感覚的にも…」
ユウキ「ミルカちゃん、情けないこと言ってもがいてないで負けを認めなよ、早くこっち側に来いよ、見苦しいよ」
先生「さっき感覚で間違えた人がまだ感覚とかそういう話をしているのは最悪だけど、この問題ではたしかに(iv)の条件は成り立つ。これは「fが連続な関数」と定められていることから導けるよ。」
---- zが無理数の時、f(z) = f(1)・zが成り立つ証明:
無理数zについて、その整数部分をA0,小数第1位×0.1をA1、小数第2位×0.01をA2... というように構成した数列Anについて考える。z = lim(n→∞)Σ(k=0, n)Ak = A0 + A1 + A2 + A3 +... と表せる。 Bn = Σ(k=0, n)Ak = A0 + A1 + A2 +... + An とする。このとき、任意の自然数nについてBnは有理数となる。 lim(n→∞)Bn = z である。 Bnは有理数であるため、f(Bn) = f(1)・Bnが成り立つ(★)。
fは連続関数であるため、任意の実数aについて、lim(x→a)f(x)=f(a)が成り立つ。
(★)の両辺でn→∞の極限を取ると、 lim(n→∞)f(Bn) = lim(n→∞)f(1)・Bn となる。 左辺 lim(n→∞)f(Bn) について、n→∞でBn→zなので、fの連続性から lim(n→∞)f(Bn) = f(z)である。 右辺 lim(n→∞)f(1)・Bn = f(1)・zである。 よって、無理数zについて、f(z) = f(1)・z が成り立つ ----
先生「このAnの取り方は一例に過ぎなくて、有理数からなるzに収束する数列ならなんでも大丈夫だよ」
ユウキ「なんでこの人はあれだけ言っておいて普通の教師の役割に戻れるんだよ」
ミルカ「なるほど…連続性の定義なんて当たり前だから大して重要じゃないって今まで思ってたけど、今回みたいに関数の形が具体的に定まってない時は、問題の設定から何が言えて何が言えないか考えるのが大事で、そういうときにこういう定義が重要になってくるんですね。私の発想は無意識にfの連続性を利用しようとしていたのに、それを証明に取り入れなかったのがダメだったのか。勉強になります」
ユウキ「おい前向きになるな、何かを学び取るな」
先生「うんうん。まだ問題を解くことに重心を置きすぎていて根本的な態度が改善されてないように思えるけど、一個ずつ学習していくのは進歩だね。数学においては、その人がいくら過去に間違えていたり、犯罪をしたりしていても、主張の内容が正しければそれは正しいから、ミルカちゃんも今日のことは気にせず、心を改めて数学をやっていこう!」
ミルカ「はい!先生!今後もよろしくお願いします!」
ユウキ「ねえ、ミルカちゃん、そっちに行かないでくれよ、先生と一緒に進まないでくれよ。僕とミルカちゃんと先生で、みんな別々なんじゃなかったのかよ。」
ユウキ「僕とミルカちゃんの間にできたように見えた溝と同じ溝が、ミルカちゃんと先生の間にもできたと思ってたけどそれは勘違いで、先生とミルカちゃんの間にその溝はなかった。先生とミルカちゃんの間に数学の能力の差があるのは明らかで、でもそれが溝になってないってことは、溝の正体は、数学の能力の差じゃなくて、挫けずに課題に立ち向かう能力や態度の有無の差だったのかよ!学校の教訓すぎる!みんな一緒に不幸になってくれよ、死ね!」 |