「橋が落ちました。雨は降り止まず、川の水嵩は増すばかりです。校舎は取り残され、川が決壊すれば水没します。電話線も切れ、外と連絡する手段はありません。助けが来るのを祈るしかありません。もしかしたら助からないかもしれません。覚悟しておいてください。あなた達二人が好き合ってるのを先生は知っています。教師という立場でこんな事を言うのは間違ってるかもしれないし、お節介かもしれません、本当はもっと段階を踏んで、愛を育んでいくものなのでしょうが、最期かもしれません。悔いの残らないように、輝かしい人生であったと思えるように、やるべき事をやってしまいなさい。鍵を渡します、保健室でも和室でも、好きに使いなさい。先生は図書室で本を読んで過ごします」
かつて炭鉱で栄えた町も資源を採り尽くし、若者は都会へ出て行った。教師一人と生徒二人になった学校は二人が卒業したら廃校になる。
「先生はああ言ってたけど、僕は助かるって信じてる。だから、その、急がなくてもいいというか、あ、もちろん堯子ちゃんのことは好ましく思ってるよ、でもその」 「私は和室がいいな」 堯子は、舜の手を引いて和室へ向かった。
堯子は覚悟が決まっていた。このような事が無くても、舜と"やる"つもりだった。2匹獲れたカブトムシの大きい方をくれた時から、そうしようと覚悟が決まっていた。カブトムシが好きな訳ではない。選択肢がある時、必ず舜は堯子が得をするようにしてくれるのだ。ショートケーキもイチゴが大きい方をくれるし、荷物を運ぶ時は重い方を持ってくれる。周りに同年代の男が舜しかいない補正はあるだろうとは思っていたが、舜でいいし、舜で申し分ないし、舜以外考えられない。天の力を借りずとも舜と成すつもりではあったが、天がくれたこの僥倖を逃す堯子ではない。
「舜がしてみたいこと何でもしていいよ」 堯子は畳の上に坐り、瞼を閉じた。
舜は血液が沸騰しそうだった。身体中の細胞が覚醒して唸り声を上げている。唾を飲み込むタイミングが分からなくなり大きな音を立てて唾を飲む。初めて会った時はもちろん雷が落ちたような衝撃を覚えたし、微笑みかけてくれたら天使だと思ったし、共に成長していく日々は幸せだったし、女性らしくなっていく体つきも見ないようにしながら周辺視野と光の屈折と風の動きで凝視していた。その堯子が「何でもしていい」と言って畳の上に坐っている。次の一手。舜の、次の一手で二人の間に境目を無くすことができる。しかし舜の口からでた言葉は舜自身、訳の分からぬ盤外からの一手だった。
「将棋がしたい」
和室はかつて将棋部の部室であり、将棋盤が床の間に飾られていた。華道部の部室や茶道部の部室だったこともあるが今は関係ない。
「将棋なら引けないわね」
駒の封を解き、パチリ、パチリと丁寧に並べる。
「999勝999敗。決着をつけよう」
振り駒をして舜が先手となった。
▲「7六歩」
△「8四歩」
▲「6八銀」
△「3四歩」
▲「7七銀」
△「6二銀」
▲「4八銀」
△「4二銀」
▲「5六歩」
△「5四歩」
▲「5八金」
△「3二金」
▲「6六歩」
△「4一玉」
▲「6七金」
△「6四歩」
▲「7八金」
△「6三銀」
▲「6九玉」
△「7四歩」
▲「2六歩」
△「5五歩」
▲「んっ
同歩」
△「同角」
▲「あ う 2五歩」
△「5四銀」
▲「2四歩」
△「ふふっ
同歩」
▲「同飛」
△「2三歩打」
▲「2八飛」
△「2二角」
▲「5七銀」
△「5三銀」
▲「5六歩打」
△「5二金」
▲「7九玉」
△「8五歩」
▲「6八銀左」
△「8六歩」
▲「う、あ 同歩」
△「あん 同飛」
▲「8七歩打」
△「8二飛」
▲「3六歩」
△「1四歩」
▲「9六歩」
△「9四歩」
▲「3七桂」
△「6三金」
▲「4六銀」
△「4四銀」
▲「3五歩」
△「んっ 同歩」
▲「いくよ 5五歩」
△「うん 同銀左」
▲「6五歩」
△「ちょっと待って 4四銀」
▲「待たないよ6四歩」
△「もう 同金」
▲「5五歩」
△「あん 6三銀」
▲「4五桂」
△「9五歩」
▲「同歩」
△「9八歩打」
▲「同香」
△「9七歩打」
▲「同香」
△「9六歩打」
▲「あああぁ 同香」
△「8六歩打」
▲「同歩」
△「同飛」
▲「積極的だね 6五歩打」
△「だって 同金」
▲「3三歩打」
△「舜もじゃん 同桂」
▲「ずっと こうしたかった
5三桂成」
△「私だって 同銀」
▲「9七角」
△「9六飛」
▲「成るよ 5三角成」
△「やだ 5二銀」
▲「やなの? 9七馬」
△「もう 同飛成」
▲「同桂」
△「3一角」
▲「3四歩打」
△「私だって成るんだから 9七角成」
▲「んんんっっ 8八銀打」
△「ふふっ 我慢してね 4二馬」
▲「な 何がだよ 3三歩成」
△「同金」
▲「5四桂打」
△「5三馬」
▲「6六歩打」
△「8七歩打」
▲「同銀」
△「8六歩」
▲「ぃ 同銀」
△「3六桂打」
▲「3四歩打」
△「うそ
そんなとこ
3二金」
▲「1八飛」
△「2六桂打」
▲「うそだろ
5八飛」
△「5七歩打」
▲「同飛」
△「5六歩打」
▲「同金」
△「あんっ 同金」
▲「うっ 同飛」
△「あんっ 8六馬」
▲「うっ 6二桂成」
△「いや もう 3一玉」
▲「ふんっ 5二成桂」
△「6七歩打」
▲「同銀」
△「9七角打」
▲「ぐっ 8八歩打」
△「7七香打」
▲「4一飛打」
△「ああん やめ 2二玉」
▲「7七金」
△「同馬」
▲「ふんっ 3三銀打」
△「あんっ 1三玉」
▲「おらっ 1一飛成」
△「ああん 1二金打」
▲「好きだっ 同龍」
△「私も好きぃ 同玉」
▲「堯子ちゃんっ 1一金打」
△「舜っっ 同玉」
▲「堯子ぉぉぉ 1三香」
△「舜んんん 1二飛打
▲「堯子好きだぁ同香成」
△「舜好きぃぃぃ同玉」
▲「うぁうぁっ2二金打」
△「あっあっ同金」
▲「んっはっ同銀成」
△「んんんんんん同玉」
▲「ふん!ふん!3三金打」
△「んもっとぉ1三玉」
▲「2三金!」
△「同玉ぅぅぅ」
▲「2五香打ぃぃ!」
△「2四香打ぃぃ!」
▲「ありません」
△「え?」
▲「ありません」
△「え?」
▲「手が続きません、参りました」
△「あ、うん」
▲「ごめん」
△「んー、大丈夫、大丈夫、最初はそういうものらしいよっ、またチャレンジしよっ」
▲「お、お願いします」
禹太郎は、武田信玄に憧れていた。信玄は戦のみならず、治水でも名を残している。信玄堤。民の安寧の為に成した治水事業である。禹太郎よ、今こそ武田信玄になるべき時だ。 図書室で本と睨めっこしていた禹太郎はかく言った。
「我が策成れり、あとは実行するのみ」 理科準備室で、硝酸カリウム・硫黄・木炭を調達、木炭を乳鉢ですり潰し、硫黄を混ぜ合わせ、革の鞄に詰め込み硝酸カリウムを加えた。あとは・・・。
リヤカーにありったけの黒色火薬を乗せ、幌を被せ、引いて歩いた。 氾濫しかけの川と鉄扉で封鎖された炭鉱の入り口が見える。ここだ。ここを爆発させれば、炭鉱に水が流れ、氾濫が緩やかになる。それに伴う問題が起こるかもしれぬがそんなことは知ったことではない。生徒二人の命が無事ならばそれでいい。 禹太郎はリヤカーを止め、導火線に火をつけ、走った。背後を振り向かず走った。
ゴオオオオオオオオ
つるビーのおすすめ
山梨県都留市の観光親善大使「つるビー」です。 ぼくがオススメする都留市の情報をどんどん紹介するよ。 2011.12.22 Thursday
宝の山に、昔栄えていた町があったこと知ってる?@宝鉱山跡地
おはよう☆ つるビーです♪
今朝も寒いね>_<
おひさまも出ていないから、空が白くて、余計に寒く感じるよ。 今日は、おうちの中でいちにちぬくぬくしていたい気分。 さて、このあいだ、宝の山に行ったときに、宝鉱山の跡地を見にいってきたよ!! 宝の山は時々飛ぶんだけど、 宝鉱山の坑道を覗いてみたのは初めてだったんだ♪♪
宝鉱山は明治5年に発見されて、昭和45年に閉山となった山梨県内唯一の鉱山だったんだよ。今の宝の山ふれあいの里がある場所に、宝鉱山で働くひとたちの町があって、 そこにたくさんの人たちが暮らしていたんだ。 そこには病院も学校も映画館まであったんだよ!!
宝の山ふれあいの里の施設からは想像できないよね。 今は当時の建物はすべて壊れてしまっているけど、 今でも当時のカラミ(鉱石)捨て場や坑口が、 かろうじてそこに鉱山があった名残として残っているんだ。
今から40年も前に閉山して、ここに住んでいた人たちはあちこちに散らばってしまったけど、 時々、昔を懐かしむように宝の山に来てくれるんだ。 そして、宝の山ふれあいの里で懐かしい鉱山時代の昔話をして帰っていくよ。
ぼくは、宝鉱山が栄えていた頃のことはぜんぜん知らないけど、 都留市にこういう場所があって、今はなくなってしまった集落があって、 人々の生活がそこにあったってことを想像すると、 なんだか不思議な気持ちになるし、 もっといろんなことを知りたいなって思うんだ。
宝鉱山のことを知りたいなって思ったら、 宝の山の番長に聞いてみて!!
今は自然体験をする施設になった場所に、 当時はいろんな人がいて、 学校で子どもたちが勉強して遊んで、 秋にはみんなで運動会をして・・・。 そんな暮らしがあったこと、みんなにも知っていて欲しいな♪♪ |