「かっちょいい…」
初めての夜。 ブラジャーが外され、彼女の裸があらわになった瞬間、僕は思わぬ言葉を口走っていた。
「え、あ、いや、ごめん、きれいだよ」
すぐさま取り繕った。 そりゃそうだ、女の子の裸に対してかける言葉じゃない。 しかし、なおも彼女の「かっちょいい」としか形容できない裸は、僕の視界を捕らえて放さなかった。
と、動揺している僕を優しくエスコートするように、微笑みながら彼女は言った。
「さわって…いいんだよ?」
そう言うと、彼女は両の乳房をパカパカと開閉させた。 開くときは緑、閉じる時は赤い光を放つ乳首が、薄暗いホテルのベッドの上で流線形の軌道を描いていた。 か、かっちょいい。 かっちょよすぎる。 気がつくと僕の手は彼女の乳房には向かわず、拳を作って天空に突き上げられていた。 何度も何度も力強く。 力の限りに突き上げた。 この感情のやり場は、性交や射精では決してなかった。 目の前にあるかっちょよさを全力で肯定する手段は、これでしかあり得なかった。 気がつくと泣いていた。 声をあげて泣いていた。 馬鹿みたいに嗚咽しながら拳を突き上げた。 涙がボタボタと落ちてシーツを濡らした。 そうか。 僕はこの瞬間のために生まれて来たんだ。 彼女の胸のパカパカと、その奥に広がる無限のような空洞に思いを馳せながら僕は言った。
「僕を……食べてください……」
キョトンとする彼女の真っ黒な瞳には、涙でぐしゃぐしゃのかっちょ悪い男が映っていた。 |