石にくくりつけられたこの手紙が私の家の窓をぶち破ったのを見て「もう逃げられない」と悟りました。 こちらとしても、あらゆる手段であなたとの交流は絶とうとしましたが、それも無理のようですね。戦場に赴くような心情で、今、筆を取りました。改めまして、よろしくお願いします、という想いです。
あの結婚式が失敗に終わったこと、それは確かに私どもの責任だと感じています。 事前のスタッフの打ち合わせ不足に始まり、当日も細かい失敗の連続で、挙げればキリがありません。 大変申し訳ありませんでした。
特に、新郎の卓郎さんへの失礼、本当に目に余るものがありました。 卓郎さんの雰囲気だけを見て「保険証とか持ったことがあります?」と何回も失礼な質問をしたことなど、大変失礼だったと思います。卓郎さんは非常に人間の出来た方で、さらにスタッフが、というか、私なんですが「保険証のレア持ってますけど、売りましょうか?」と完全にバカにした言葉を投げかけても、笑って対応して下さいました。卓郎さんの人柄だけを見ても、その後の二人の生活、きっと穏やかに過ぎていること、想像に難くありません。
当日、人が足らず、卓郎さんにいろいろと手伝ってもらったことも、申し訳ありませんでした。 式場の準備はもちろん、特に関係の無いガラスの端っこをただ持たせたり、ハムスターの相場を調べさせたり、このあたりも主に私なんですが「一番、凶器になるお湯の温度」という個人的に調べていたテーマのため、背中に熱湯をかけてしまったこと、本当にひどかったと思います。この場を借りて深くお詫びいたします(結果、75℃でした)
それと、お二人の馴れ初めのスライドを流すはずが、90年の西武−巨人の日本シリーズ全戦を流してしまったことも、大変失礼致しました。せめてもっと接戦になったシリーズだったらまだよかったものの、西武の4連勝というワンサイドゲームで盛り上がりも無く、申し訳ありませんでした。 試合が終わったあとも、式の時間が無いのにも関わらず、ただ私が見たいという理由でデストラーデのホームランのところを何度も再生したり、今思うと「何で…」と思うのですが、私の中の 獅子愛 が出てしまったとしか言えません。本当に申し訳ありませんでした。
数々の不手際により、お二人の結婚式は台無しになってしまい、そのときに直接お詫びをできればよかったのですが、そういう失敗をやらかした際、私は「自分のプライドを守るため全ての感情のスイッチを切り、遠くへ逃げる」という悪癖が発動するため、そのときも気づけば青函トンネルでした。 何度もお手紙を頂き、しかも内容が全て「式の前の設定」であることに、深く恐怖は感じていました。 それでもまだ逃げようとしていた私が浅はかだったのでしょう。こうして今、窓ガラスの破片が飛び散る部屋でこの手紙を読んで、深く後悔しております。人間、罪は償わないとならないのですね。 今一度、深くお詫びさせて頂きたいと思います。本当に、大変申し訳ありませんでした。 これを読んでいる間にも5個、石が飛んできました。どうやら本気のようですね。
つきましては、近々、直接ご自宅に出向き、謝罪をさせて頂きます。 その頃には、おそらくお湯も温まっていることかと思います。
何とぞ、よろしくお願い致します。 |