ドラえもん「のび太くん、また今年も庭の椿の木が花を咲かせたよ。鮮やかなピンク色の花弁を眺めている間だけは君のことを忘れられそうなんだ。 最近の僕はどうも感傷的になってしまっていけない。昨日も、スーパーマーケットで牛乳を買うだけのことがひどく難儀に思われて、棚の前で2時間も立ち尽くしてしまった。僕がスーパーマーケットの乳製品売り場で呆然としている間も外の世界は変わらず動き続けていると思うと、気が狂いそうだったよ。でも君だって今ではそっち側の住人だ。君には幸せになる権利があるし、武器を持つ権利もある。もちろん、牛乳を買う権利もね。でも僕は結局牛乳を買えなかった。たぶん僕は、こうやって時代から取り残されていくんだと思う。胸の大きい保母さんのように時代が僕を包容して、どこか穏やかな場所に連れて行ってくれると思っていた時期もあった。でも僕は牛乳の一本も買えやしない。君は牛乳を買えるけど、僕は牛乳を買えない。僕に言えることはそれだけだ。あと300年生きたとしても同じことしか言えないだろう」 |